日本安全登山推進機構では、" 知る " ことで遭難事故を減らす事ができると考えています。資格認定に伴う学習過程で様々な知識は身につきますが、技術に関しては実地における直接指導でなければ教育が困難です。そこで、安全に関する技術を学ぶ場として安全登山講習会を設けました。
山岳遭難事故要因は、道迷い、転滑落が最も多く、この二項目だけで統計上の遭難事故要因の70%を占めます。病気、疲労と続き、この四項目で90%になります。つまり、遭難事故を減らす為には、転滑落を防ぎ、道迷いを起こさず、無理せず山を歩く方法を身につける必要があります。転滑落を防ぐ上でもっとも重要なことは、歩行技術と三点支持技術を身につけることです。岩場などにおける危険箇所を確実に登り降りするための技術を学んだり、滑りやすい斜面でも安定的に歩ける歩行方法を学んだりすることで転滑落のリスクを大幅に減らすことができます。また、疲れない歩行を学ぶことは、病気による突然死のリスクを軽減させ、疲労による行動不能のリスクも減らします。
地図とコンパス、スマートフォンのGPSアプリの使い方を学ぶことで、道迷いのリスクも減らせます。実際の遭難事故は統計値の通りではなく、道迷いの結果、疲労して行動不能に至ったり、その上で転滑落を引き起こしたりなど、そもそもの遭難事故のきっかけが道迷いであることも少なくありません。道迷いを防ぐことで、遭難事故に遭う確率を大きく引き下げることができます。
山岳遭難死亡事故に目を向けると、転滑落、病気、低体温症が要因の大部分を占めるとされています。病気は65歳以上の方に増えるので、65歳未満の方に限定した場合には転滑落と低体温症が最大の死因となります。つまり、ここを如何に防ぐかが山で生き延びるための鍵なのです。いくら歩行技術や登攀技術を磨いても、100%転滑落を防げるわけではありません。そこで、危険箇所ではロープによる安全確保が求められます。ロープによる安全確保を行う事で、命に関わるような大きな墜落、滑落を防ぐ事ができます。しかしそれで怪我まで防げるわけではありません。万が一に備え、セルフレスキューやファーストエイドの技術についても学んでおくことは、安全に登山を行う上で重要な学習項目であると考えられます。
また道迷いの末に疲労して動けなくなったり、転滑落により怪我をして動けなくなったりした場合、その時点では命に関わる状態では無かったとしても、後に低体温症で命を落とす危険があります。確実なビバークを行う技術と知識を、実体験を踏まえながら学習することで低体温症による死亡事故を減らすことができます。
この様に、山岳遭難事故の統計を分析することで見えてくる山の危険に対して身を守る技術を習得することで、山のリスクを大きく低減することができます。これらの技術を学ぶ場として、安全登山講習会を用意しています。決して高価な講習会ではありませんので、ぜひ全ての登山者に学習機会を設けて頂き、山岳遭難事故を減らす一助になればと願っています。
山岳遭難事故発生要因第二、三位である転倒、滑落を防ぐためには歩行技術が極めて重要です。
基本となる静荷重歩行法を実際の不整地で繰り返し習熟し、コツを掴みます。また、岩場での安全な移動に必須の三点支持も確保を取った状態で繰り返し練習します。
山岳遭難事故発生要因第一位である道迷いを防ぐことこそ、安全に山登りを行う上で最も重要です。
基本となる地形図の読み方、コンパスの使い方、スマートフォンのGPSアプリの使い方などを学び、登山中の道迷いを防ぐ技術を学びます。
ビバークが必要な状況になった際に、快適にビバークする技術と装備をもっていれば、無理に行動による危険を回避することができます。
いざと言うときには、スムーズにビバークできる技術を身につけ、自信と余裕をもった登山ができるようになりましょう。
基本的なロープワークを独学ではなくきちんと学ぶことは、安全性を高め、知らなかったことによる事故を防ぎます。基本だからこそ、きちんと確保理論に基づいたロープワークを学びましょう。エイトノットや、クローブヒッチ、もやい結びなど特に使用頻度の高い結びを中心に学習します。
万が一事故が発生してしまった際の初期対応の技術をあらかじめ身につけておくことで、登山の安全性を高め、安心して挑戦することができます。
担架搬送や背負い搬送、ロープを使った引き上げなど、セルフレスキューの要となる技術をしっかりと学ぶことのできる講習会です。
保温保護の方法や擦過傷(すり傷)や足首の捻挫の応急処置、そして止血方法など登山を行う上で知っておくべき最低限の応急救護に関する知識を学ぶ講習会です。これらのことを知っているか否かが緊急時の明暗を分けます。しっかり学んで、落ち着いて対応できルようになりましょう。